HOME > BLOG > STAFF BLOG

blog

  • STAFF BLOG
  • SELECT BEPPU BLOG

STAFF BLOG

ニシジマ・アツシ トークイベント

KASHIMA 2010 BEPPU ARTIST IN RESIDENCEの参加アーティストの一人であるニシジマ・アツシさんが、今年の9月に別府滞在制作を行いました。制作された作品は11月に開催されるベップ・アート・マンス 2010で、11/1(月)からplatform05で発表されます。展覧会に先立って、9月の来別時にトークイベントを行いました。ニシジマさんの考えを知って作品を楽しむと、より一層楽しめると思います。ぜひご一読ください。

ニシジマ・アツシトークイベント
日時:2010年9月17日(金)
場所:サロン岸

別府を訪れた感想
九州を訪れるのは今回の滞在が初めてです。京都は今の時期(9月)、まだとても暑くて過ごしにくいですが、別府の気候は湿気がなく、京都とは違って驚いています。別府は温泉が身近にあり、毎日温泉三昧、たいへん過ごしやすですね。この機会をつくってくださったBEPPU PROJECTの方々に感謝しています。

自身の作品の基本的な情報
オブジェ作品や平面のビジュアル作品も制作しますが、いづれにしても音という目に見えない現象と日常の事柄とを類推して発想しています。出身大学が音楽系だったのですが、従来の音楽のように音を構成することよりも「音」そのものの"ありさま"や常にそれに付随する時間と空間に興味があります。

過去の作品について(以下、ニシジマさんの過去作品への説明を簡易にまとめたもの)

MONDRIAN PING*PONG
一見何の変哲も無い卓球台のように見えるその台の裏には、モンドリアンの絵画が描かれている。その絵画の中には、赤、青、黄色の四角形に描かれた部分があり、その部分だけは加工が施されていて、台の厚みが他の場所と違って薄くなっている。その部分にピンポン玉が当たると、他の場所に当たった時とは異なる音色とバウンドになる。ラケットには、羊皮紙でピンポンを楽しむ中世ヨーロッパの慣習にならって、犬の皮が羊皮紙の代用品として貼られていて、複数用意されたラケットは、それぞれに音程・音色が異なる。
この作品は、得点を競い合うものではなく、プレーヤーそれぞれが、お互いに相手のことを思い合い、できるだけ長くラリーを続けることが大切で、その時に発せられる予測できない音やリズムすべてが音楽になる作品。

Sympathetic Wiretap op.3
CDに録音された音楽を電磁コイルによって磁力化し、オブジェにはられたピアノの弦に共振させて発音する作品。様々な音が混じり合った音楽から音を抽出(剥き出し)し、新しい音響として再構成するこのシステムは、当時、環境・エネルギー問題に感心があり、アーティストの一方的な表現として生産され、需要が無く中古CDショップでも無料となったCDという産業廃棄物をリサイクルできないかと考えたことからうまれた。リサイクルには分離・抽出という技術がとても重要であり、混じり合った音楽から共振現象を利用して音分離し抽出する発想は、その当時、実験助手をしていた京都大学付属病院において、遠心分離機を使用した血液検査の技術から発想している。

『Solid Scanning』
様々なオブジェ(ロックアイス、テレビ石、キャラクターのフィギア他)に糸を巻きつけ、形を糸に記録させる。その後、その糸を丁寧にほどき、糸という線上に記録された立体形をエンボス手法によって紙に記録した版画作品。

『Cӕnvironment Sonic Research』
CanとEnvironmentをかけたユーモラスなタイトルのこの作品は、
京都市街の地図上に定規を投げて、任意に導かれた直線上の8つのポイント(2km間隔)で春夏秋冬の1年間に4回、同じ時間に同じ場所に行って空き缶を蹴り、その響きを録音し、1年間を通じて、いかに音が変化するか調べた作品。。季節の移り変わりや風景を空き缶の響きから知る。

SKY FISHING - sound kite project
世界各地で凧揚げを実施し、凧の糸に取り付けた特殊なマイクで風の音を聞く作品。季節や風景など二度と同じ状況に出会えない、たった一度の機会を音として感じる作品。目に見えない風の動きや雲の変化ほか、空に舞い上がった凧をとおしていろいろなことを発見する。

20世紀芸術に大きな影響を与えた作曲家(故)ジョン・ケージの生誕100周年である2012年に向けて、2007年からJohn Cage Countdown Event 2007-2012というコンサート活動を継続して開催している。今年は11月6日に東京・青山学院アスタジオにて開催予定。

質問
サウンドアートは旋律やリズムを排除しているように思えるのだが、サウンドアートの先に何があるのか
回答
サウンドアーティストもいろんな方がおられるので、僕の意見としてしか言えませんが、そもそも旋律やリズムは従来の音楽の構成要素であり、概念だと思います。音をいかに美しく、もしくは情緒的に楽譜上の時間軸に配置し、構成するか。悪い意味ではないです。すこし冷めたいい方になってしまいましたが...僕は、そういった音楽や音、そこに同時に存在するものの動き、色の位置、量等々、マクロな視点から見た風景的ながめというか、空間の時間的変化に興味があります。ある意味それを音楽?として捉えているのかもしれません。
サウンドアートは、音を用いたアートと説明されることがありますが、僕にとっては見えないものの象徴として、サウンドアートと称しています。音そのものはそんなに重要ではなくて、音は何かと何かの"関係"の聴覚的な現れなので、その音という現象の背景にある"関係"という物語が、単なる物理的なものでなく、僕たちの日常や社会の中の何かと類推すればとても似ているところがあったりして、とても興味深く思えるんです。だから、逆に身の回りのことを注意深く見ていると、生活そのものが"音楽"的な気がしたりして...だから僕の場合は、音楽的なリズムや旋律、作曲技法よりも"類推"的な考え方を大切にしています。だからというわけではないですが、落語はとても参考になっています。何か新しいものをつくるというよりも、新たな見方というか視点を作曲しているような感じでしょうかね。

質問
料理で音を作るとしたらどのようなものが考えられるか
回答
料理用語で「さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)」という語呂があります。これは味の染みやすさなんかを基準に、調味料を投入する順番を表したものではないかと思っています。この例の通りに、料理においては順番が意外と大事であり、音楽においても同様な気がしています。それは、いま音を選択しようとする時、少し前の比較的新しい過去の音の順番の影響を意外に受けているからです。
また、調理器具の使い方によって味覚や食感がかわるように、音楽においても楽器や録音機器等の使い分け、扱い方によって、質感もかわるので、料理の考え方も類推すれば、音楽制作に活かせる気がします。普段の作品についても、建築や料理など、より生活の中で身近な分野から発想することは多いです。

質問
11月23日に、別府永久劇場でコンサートを開催するそうですが、現在の構想を聞かせて下さい。
回答
まだあまり考えていません(笑)。音楽は音楽を専門とする方にお任せし、僕は、聴きながら物思いにふけれるような、抽象的ですが、中心をもたない作品というか音響的空間がつくれればと思っています。中心をもたない作品というのは、特に旋律やリズムもない風景的な音環境のような...。

普段「音楽」と聞くと、「音楽=音を楽しむ」と考えがちですが、「音楽=音が楽しむ」と考えられないかとよく思います。アニミズム的な言い回しになっているのかもしれませんが、"音"さんが楽しめる、主語を人間ではないものにすると、マクロな視点で考えることが出来るような気がするんです....。あまりエコと絡めたくないけど、こういう風に主語をかえるだけで環境についての視点が変わるんじゃないでしょうかね。

コメント(0)

コメントをどうぞ