work

まちの記憶に会いにいく cities on the book

業概要

レトロ・モダン、アートな町並み展開のための整備事業

開催日2007年
発行日2006年6月25日
事業主ONSENツーリズム実行委員会 
助成JTB旅連本部補助金事業
発行部数5000部

ハード事業としてシンボル的な看板(アートサイン)を設置する。具体的には、旧市街地である南部・中心部地区の大小様々な通りに対する命名と、その地域から掘り起こされた様々な「物語」をテキスト化し、イラストを載せたサイン(看板)を設置するというものである。

この整備事業は、以下のような段階によって進められた。

 

・ 2005年冬から約半年間、フィールドワークとして町の調査を行った。この調査では町の様々な史実だけではなく、その場所に住む人々の私的な思い出や物語も収集した。

・ この調査をもとに想起される文章とイラストを制作。「絵本」のようにレイアウトした琺瑯看板を52枚制作し、対応する各通りに設置した。48枚設置済。4枚交渉中。

・ 名前のない通りには、住民感情に配慮し、史実から想像できる通り名を命名した。

 一般的な通り名のみ書かれた看板や、従来の史実・歴史を伝えるだけの教科書的な案内板ではなく、この土地が持つ記憶や物語を提示する、小さな絵本のような体裁をもつサインを町に設置することで、別府温泉旧市街地が読む人それぞれ独自の物語を想像する「物語都市」へと展開していく可能性を持つ。つまり、従来では観光資源として機能しなかった老朽化した町そのものや、町の変貌自体が財産となることを示唆する。

 

看板文章:一部抜粋

 

国際通りソルパセオ

 

からころと下駄の音もにぎやかに そぞろ歩く銀座街

呼び込みの声に誘われ 店先をのぞけば 色とりどりの土産が並ぶ

選ぶ子供の歓声が わーんと通りにこだまする

 

楠湯通り

 

大きな楠の下には こんこんと湧き出る泉があります

その泉のまわりには いつからか たくさんの花が咲き乱れるようになりました

甘い香りに誘われて ミツバチやちょうちょも集まってきました

ところが やがて秋が過ぎて冬がやってくると どの花もきれいな花びらが散り

みずみずしかった葉もすっかり色あせてしまいました

ミツバチもちょうちょも姿を消し 楠だけが残りました

楠は待っています やがて巡ってくる春に 一羽の小鳥が運んでくる花の種を

そして もう一度ここにたくさんの花が咲き乱れる季節が訪れることを