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食文化創造都市うすきシンポジウム『世界が認めた!! 食文化あふれる臼杵』 パネルディスカッション 開催レポート

イベントレポート

大分サステナブル・ガストロノミーとは ~日々の食事からはじめるサステナブル~

11月10日(木)、臼杵市にて食文化創造都市うすきシンポジウム『世界が認めた!! 食文化あふれる臼杵』が開催されました。このシンポジウムは、2021年に臼杵市がユネスコの食文化創造都市に加盟したことを契機に、臼杵市、そして大分県の食文化の魅力を再発見することを目的に開催されました。

大分サステナブル・ガストロノミー推進協議会では、その第一部としてパネルディスカッション『大分サステナブル・ガストロノミーとは~日々の食事からはじめるサステナブル~』を実施しました。

ファシリテーターにYamaide Art Office 株式会社 代表取締役の山出淳也 氏 を、パネリストに須藤智徳 氏 (立命館アジア太平洋大学 教授) 、木村真琴 氏 (合同会社 FUKUO 代表)、稲垣健児 氏 (やおや六画ストア 店主) をお迎えし、SDGsや食文化、生産・流通・売場など、それぞれの専門分野からサステナブルな食にまつわる取組についてお話ししていただきました。

 

SDGsの専門家の須藤 氏は、大分サステナブル・ガストロノミー推進協議会の一員でもあります。SDGsやサステナブルの概念をわかりやすく解説したうえで、大分サステナブル・ガストロノミーとは「大分県独自の食を取り巻く文化や歴史、環境を保全しつつ、時代に合わせて改良を図ること」であると説明されました。

地域の文化を大切にしながら、将来世代に引き継いでいくこと。そして、先人から受け継いだものを我々世代のニーズに応えながら発展させていくとともに、将来世代もその時代のニーズに合わせて変化させていくということが、持続可能性の鍵であることをお示しいただきました。

須藤 氏が教鞭をとる立命館アジア太平洋大学では、次年度からサスティナビリティ観光学部が設立されます。持続可能性を意味するサスティナビリティと観光がいかに結び付けられていくのか、大いに期待が集まっています。

続いて、歴史料理の研究家でもあるフードディレクターの木村 氏は、地質や環境、地域固有の資源などによる大分県の食文化の特異性を紹介されました。

大正の終わりから昭和の初めにかけての大分県の食生活を調査した『聞き書 大分の食事』(日本の食生活全集、1992年) には、現代に受け継がれていない料理も多く掲載されており、伝統食の継承機会が十分でないことを指摘されました。また、自分の生まれ育った地域の食文化の再認識することはもちろん、それをアップデートしていくことでサステナブルな未来につなげていきたいと語りました。

 

 

臼杵市での就農経験を経て、流通に課題を感じた稲垣 氏は「有機野菜の価値を伝えるためには、売手の存在が重要だ」と一念発起し、現在は大分市と別府市に店舗を構え、臼杵のほんまもん農産物をはじめとする大分県の農産物の魅力発信に努めています。

農家の負担を軽減するために農園まで集荷に行くこと、対面販売で商品の価値をしっかり伝えることなどを売手としてのご自身の役割と捉え、さらに宅配サービスや朝市の開催、子ども向けのマルシェや1日店長体験など、さまざまな手法で農業や野菜を身近に感じてもらうための取組を展開しています。また、量り売りによるプラスティックの削減や、劣化商品を活用した商品開発など、SDGsの観点による取組にも積極的です。

 

 

後半は山出 氏の進行で3者での議論が交わされました。

山出 氏から各登壇者に「持続可能な食文化のために今日からできる取組」について尋ねると、稲垣 氏は「古くなった野菜も、捨てるのではなく使い方を考えてほしい。煮込んでベジブロス (出汁) を作るなど、活用することでフードロスにもつながる」、木村 氏は「親子で楽しみながらフードロスについて考える機会を設けるなど、身近な気づきを大切にしてほしい」と答えました。須藤 氏は「日々の食事の際に、先人はなぜこの料理を今に伝えたのか、我々はこの料理をどのように未来に伝えるべきかを意識してほしい。郷土料理を自分たちの世代や将来世代が受け入れるための味付けや工夫について考えてみてほしい」と述べました。

 

これらの意見を受け、山出 氏は「大量に生産することができない季節感や地域性こそが食文化の最大の価値である」とし「世界の食文化をリードする食文化創造都市・臼杵として、これからも未来に向けたメッセージを発信し続けてほしい」と締めくくりました。

先人から受け継いだ食文化や地域資源を大切に活用するとともに、何を未来に残すべきかを考えることこそが持続可能性の第一歩です。未来につなぐ文化を形づくるのは、現代を生きる私たち1人ひとりの小さな取組の積み重ねです。このパネルディスカッションでは、未来のために日々できることや、そのヒントになるキーワードを多くお聞かせいただきました。

ぜひみなさんも、今日の食事からできることを意識してみてくださいね。