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地域の旬の食材を使って、体がよろこぶ料理を作りたい

持続可能な食文化を支える人々 File6:玉井徳裕さん

さまざまな領域でサステナブル・ガストロノミーを実践する方々にインタビュー取材してご紹介する「持続可能な食文化を支える人々」。

今回は食ラボ大分 (大分食文化研究所) の玉井徳裕さんに、食ラボ大分の活動や、玉井さん自身の食に対する思いやこだわりをお聞きしました。


 

大分の食を盛りあげる食ラボ大分と玉井シェフ

 

玉井徳裕さん (食ラボ大分 (大分食文化研究所) 会長)

 

料理人の職能を活かした社会参画

食ラボ大分とは、大分の食を盛りあげる料理人のチームです。現在は主に7名ほどで活動しています。
これまでに食に関する交流イベントや勉強会、食育の推進活動などを実施し、料理人の職能を活かして、食文化の普及・向上に寄与する活動を展開しています。勉強会では、テーマとなる食材を決め、料理人同士で知識や技術を共有する取組を地道に継続し、大分県の食文化の底上げに努めてきました。
こうした活動の積み重ねがだんだん知られるようになり、県産食材のPRやブランド化などの事業に対して意見やアドバイスを求められるなど、料理人として社会活動に参画することも増えてきたそうです。

料理は言語や人と人との隔たりを超える

玉井さんは、なんでも手作りだった家庭に生まれ育った影響で、ご自身も料理やお菓子はもちろん、洋服まで作ることもあるのだそう。そんな器用な玉井さんが、料理の道を選んだきっかけはなんだったのでしょうか。
「中学生のときに参加した合宿で、僕が作った料理をみんながよろこんでくれたことです。その合宿には初対面の人や外国籍の人も多く参加していたので、料理は言語や人と人との隔たりを超える力があるのだと感動しました」

その原体験から料理人を志すようになり、東京のレストランで働きはじめます。しかし、すぐに厨房に入らせてもらえるわけではありません。最初はサービスマンとして接客を学ぶ傍で、休みの日には百貨店や美術館で一流の食器や調度品に触れて目を養ったり、レストランや洋菓子店を食べ歩いたりと、自己研鑽に熱心だった玉井さん。当時のノートを見せていただくと、食べ歩いた料理やお菓子の情報が、細かい文字と図でぎっしりと書きこまれていました。

その後も東京やフランスで料理人としての経験を重ね、帰国後は大分市の飲食店のサポートなどを経て、株式会社 フィオーレに入社。飲食店を複数経営する同社で、現在は『リストランテ クインディチ』のシェフを務めています。

体がよろこぶ料理を作りたい

『リストランテ クインディチ』では、大分県産の食材とオーガニック食材を組み合わせたメニューや、旬を感じる季節のお料理が提供されています。
「サステナブルであることを強く意識しているわけではありません。僕は、生活している地域の気候風土にあったものをタイムリーに味わうのが自然だと思っています。そうでなければ、体がよろこびませんからね」と、玉井さん。地域の食材や旬のものを使って、体がよろこぶ料理を作りたいという思いで続けてきたことが、結果として持続可能性を高めているのです。

玉井さんは「料理人としてのよろこびを感じるのは、やはりお客さんがよろこんでくれたときですね」と、語ります。さらに「料理人も生産者もチームになって、そのよろこびを分かち合いたい」と続けました。

大分県を1つのチームに

体がよろこぶ料理は、料理人の力だけでは作れません。食材が産地から食卓に上がるまでの過程に関わる、すべての人々の想いやこだわりが、その一皿を作っているのです。
玉井さんのお話や食ラボ大分の活動から、「大分サステナブル・ガストロノミー」が目指す、大分県ならではの持続可能な食文化を実現させるためには、より多くの人々と想いを1つにして取り組むことが必要なのだと感じました。

*本記事の内容は2024年1月にインタビューしたものです。