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臼杵の文化と人がつくる『USUKI VENUE (ウスキベニュー)』
持続可能な食文化を支える人々 File7:西村昭郎さんさまざまな領域でサステナブル・ガストロノミーを実践する方々にインタビュー取材してご紹介する「持続可能な食文化を支える人々」。
臼杵市と臼杵市観光協会が主体となって取り組む観光事業『USUKI VENUE (ウスキベニュー)』。
今回は一般社団法人臼杵市観光協会の西村昭郎さんに、歴史・文化・食・人材など複数の資源を組み合わせた『USUKI VENUE』の開発経緯や今後の展望についてお聞きしました。
特別な場所で臼杵の食の素晴らしさを体験してほしい
西村昭郎さん (一般社団法人 臼杵市観光協会 専務理事)
臼杵の新しい観光事業『USUKI VENUE』のはじまり
『USUKI VENUE』とは、臼杵市内の国登録有形文化財「稲葉家下屋敷」を貸し切り、臼杵の歴史と文化をより深く体験できるパーティープランです。
武家屋敷という特別な場所で、臼杵の人と交流しながら臼杵の歴史や文化を体験し、特別な時間を過ごしてもらおうというコンセプトで2024年4月から一般販売がスタートし5件を催行。今年もすでに7~8件の予約が入る注目の商品となっています。
『USUKI VENUE』は、2022年に臼杵市役所が臼杵市観光協会と共同立案し、翌年観光庁の「インバウンド客の地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」に採択され事業化されました。西村さんは臼杵市観光協会の職員として、この事業のプロデュースに携わっています。
初めは、歴史的建造物である稲葉家下屋敷をユニークベニュー(特別な場所)として、学会やパーティーを誘致したいという思いからスタートしたそうです。

「稲葉家下屋敷は通常、誰でも観覧もできますが、このような特別な場所でパーティーや会合をおこなうことは、観覧するだけでは得られない特別な体験を提供できると思いました」と西村さんは言います。採択後、まずは実証実験として観光関係者を招いてのガーデンパーティーを実施したそうです。武家屋敷で、寺の住職、料亭の女将、酒蔵の社長など地域の魅力を語ることができる人材『ほんまもん観光人』との交流とともに臼杵の食を楽しむプログラムで、380年以上前から続く臼杵の伝統芸能「祇園囃子」も披露されました。
今と昔を行き来するストーリーが盛り込まれたメニュー開発
実証実験の参加者を対象にしたアンケートで「もっとストーリー性が必要である」という意見が寄せられたことがきっかけになり、コース料理『古今』を開発することになりました。『古今』は、稲葉家の食の「OLD & NEW」をテーマに、臼杵市がユネスコの食文化創造都市に選ばれた食文化の8つの要素を全て組み込んだ、昔と現代の料理(計10品)からなるフルコースです。

はじめに提供されるのは、稲葉家の時代からお殿様が食べていたと言われる「鯛のひれ吸物」。
臼杵に昔から伝わる、「四条流三々九度の盃事」という結婚式の披露宴で用いられる作法で、乾杯の前に両家と仲人さんが「ひれ吸物」を飲むという風習から取り入れたそうです。
2品目以降は、臼杵のほんまもん農産物を使った色とりどりの野菜を臼杵焼きのお皿に盛りつけた創作料理や、きらすまめしや茶台ずしなどの郷土料理、ふぐ料理などが提供されます。
さらにそれぞれの料理に臼杵の地酒や有機茶をマッチングし、臼杵の伝統と現代の食文化を交互に味わうことができるストーリー性のあるコース料理が完成しました。
感動交流体験を味わう
『USUKI VENUE』は、「武家屋敷での感動交流体験」をコンセプトに掲げています。
稲葉家下屋敷の貸切利用を基本に、『古今』をはじめとする臼杵市の食文化を体験するお料理の提供、「ほんまもん観光人」との交流、祇園囃子や獅子舞などの伝統芸能の披露がオプションとして選択でき、目的や予算などの要望に合わせてカスタマイズすることができます。
これまで、結婚披露宴や九州各県の旅行関係者の研修会のほか、クルーズトレイン『ななつ星in九州』のコースにも組み込まれるなど、さまざまな用途で利用されています。
事業実施から2年目にさしかかり、今後より幅広いニーズに対応できるよう、臼杵石仏での座禅体験や、朝ヨガ体験と朝食を組み合わせた体験メニューも構想中とのこと。これからもさまざまな地域資源を活用した体験メニューを増やしていくそうです。
「稲葉家下屋敷は、臼杵の歴史を感じていただくのに最もふさわしい場所です。その特別な場所で、特別な料理を味わい、臼杵の食の素晴らしさをいろんな人にもっと感じてもらいたいです」と西村さん。さらに「この体験商品を軸に、臼杵に数多くあるその他の地域資源も発信していきたいと思っています。臼杵の食の価値向上と同時に、さまざまな波及効果を生むことができる取組に発展させていきたいです」と、今後の展望を語りました。

『USUKI VENUE』はさまざまなコンテンツを組み合わせてオリジナルの体験を作ることができるセミオーダー形式が魅力の体験商品です。今後ますます『USUKI VENUE』の価値を高めていくためには、オプショナルメニューを拡充し、より個人のニーズに沿った満足度の高い商品の提供を可能とすることが肝要です。そして、その原動力となるのは、臼杵市を愛し、その魅力をもっと多くの方に知ってもらいたいと願う人々の活動です。
豊かさと持続可能性を兼ね備えた文化を育み、今に伝えてきた臼杵市。文化を資源に、現代の感性とかけ合わせていくことで『USUKI VENUE』はこれからもますます輝きを増していくことでしょう。そして、この取り組みが大分県全域の魅力発信を牽引するものへと発展していくことを期待しています。
*本記事の内容は2025年1月にインタビューしたものです。