審査を終えて
「既存の芸術領域を拡張する独創的で挑戦的な作品を募集」するとしたBEPPU ART AWARD 2011には156件の応募があり、このうち応募条件を満たした155件のプランについて、7月16日、書類による一次審査を行なった。
まず、各審査員が全プランに目を通し、各自、気になるものを選び出す。審査員が一人でも選べばそのプランは残される。次に、こうして選ばれたすべてを机上に並べ、各自8プランを選んで総数を絞り込む。この過程で、件数はおおむね1/4に絞られた。ここで各プランについて審査員全員で議論を行ない、再び、同じ過程を繰り返す。つまり審査員各自による選出と全員での議論を何度も繰り返し、休憩も挟みながら7時間以上かけて、一次審査通過者8組を選び出した。
そもそも既存の表現を越えようとする試みを書類だけから読み取らねばならないわけだから、審査員の想像力自体が試されて、けして容易な作業ではなかったが、満足のいく8組を選出できたと思う。
この8組の一次審査通過者には、8月20日、プレゼンテーションの場を設けた。どれも聞き応えのあるもので、審査員にとっても刺激的な経験であった。その後、二次審査に移り、これについてはすべて議論によって進めることにした。山田健二、柴田有理、橋本聡、三氏の提案が評価されたが、グランプリの決定には時間がかかった。
山田氏のプランは別府の地下に眠る地下道という存在を、都市伝説の領域から現実の領域に引きずり出し、われわれの想像力を圧倒的なまでに刺激した点が評価された。
柴田氏のプランは個人の必然性に裏打ちされた瑞々しい着想と構想力、卓越した言語センスが評価された。
橋本氏のプランは明快かつ斬新な設定が、本アートアワードの趣旨に合致すると評価された。
しかし同時に、各プランとも、作品の実現、あるいは具体的な展示において、こうして評価されたすばらしさを不特定多数の人々に十分に伝えられるのだろうかという疑念も捨てきれず、にわかに1本に絞ることはできなかった。そのため議論を重ね、結局、総合力で群を抜いた山田氏の提案をグランプリとし、柴田氏、橋本氏には審査員特別賞を創設し、差し上げることにした。
最後に、審査員を代表して、この新しいアワードに挑戦してくれたすべての方々に深く感謝したい。こうした真摯な挑戦こそが、次の時代を切り開いていくものと信じている。
芹沢高志(審査員長)
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